ペーパークラフト講座

基本篇

このコーナーでは、これからペーパークラフトにチャレンジしようという方のために、基本的な知識やテクニックをご紹介します。中には門外不出の裏ワザに相当する部分もありますが、ペーパークラフトの普及のためには情報の提供を惜しみません。ハサミの使い方に始まり、今後どんどん記事が追加されていくので、全部集めればペーパークラフトの入門書が完成することになります。
第1〜3回
カッティング
第8回 接続
第9回 紙
実践篇
道具紹介



第4回 ハーフカット

 折り紙や和紙細工のように、薄い紙を折るのは簡単ですが、ペーパークラフトによく使用される洋紙の厚紙をきれいに折るのには、面倒ですが折れ線にスジを引くハーフカット(スジ引き)という作業が不可欠です。

 その理由は先にも言ったとおり、薄い紙の方が厚い紙より折りやすいので、紙の折り線の部分だけ厚みを減らす(削る)ことによって、確実にきれいな折り目で紙を折ることができるからです。印刷物の場合、折り線の部分にミシン目が入っていたり、折れ線の部分がプレス(圧縮)されていたりしますが、これも、折れ線の部分の紙を弱めて、そこで折りやすくするためです。

 さて、ハーフカットに使用する道具ですが、ハサミやカッターのように具体的でわかりやすい道具というものがありません。要は、先が尖って硬いものなら何でもよいのです。例をあげればコンパスやディバイダの針、鉄筆、千枚通し、目打ち、アイスピック、牛乳の蓋開け、錐、釘、インクの出なくなったボールペン、編み棒、レース針、バーベキューの串、ペーパーナイフなどです。鉛筆のように握って使える形のものが適しています。

 これらの道具を使って折れ線を強くなぞり、スジ(みぞ)をつけるのがハーフカットです。ここで、注意しなければならないのは、力を入れすぎて紙を貫通してしまっては元も子もないので、力の加減に気をつけることです。特に、定規を使って直線のスジを引くときには思った以上に力が入っているので要注意です。

 また、針の先が鋭すぎたり、先端の加工が荒いと、紙の表面に引っかかってケバ立ってしまい、スムースなスジが引けません。そこで、他の用途との兼用を考えず、ハーフカット専用の道具として使うのなら、尖りすぎた針の先端はやすりなどでなめらかに削って成形しておくと便利です。

第5回 折る

 ハーフカットでスジをつけたら、紙を折ってみましょう。紙の折り方には、180度折り返して二枚重ねにしてしまう場合と、直角など特定の角度をつけて立体化する場合があります。いずれの場合も、紙が元のように開いてしまわないように、折り目はきっちりときめる必要があります。角度をつけるだけの場合でも、一度ぺしゃんこに近いところまで折ってから、正しい角度まで戻すのがよいでしょう。

 特に、折れ線が曲線の場合には、元に戻りやすいですから、折り目の稜線に爪を立ててしごいたり、きつめに折ってから戻すなどして、紙が開かないようにします。一度こうしてくせをつけてしまえば、紙には形状記憶の性質がありますから、めったに元に戻らなくなります。

 ところで紙を折る向きには、「山折り」と「谷折り」という2通りの折り方があります。既成のキットの場合ふつうは山折りを点線、谷折りを一点鎖線で表します。山折りは
折り目を凸型に折り、谷折りは凹型に折ります。名前の通りですね。

 一般に谷折りより山折りの方が折りやすいです。折り目を見やすく、力を入れやすいこともあるしハーフカットが山折りに向いていることも、その理由です。そこで、谷折り線を折るときには、紙を裏に返して山折りとして折るという、文字通りの「裏技」もあります。

 また、細い部分を折る場合ハーフカットを行うと、その部分の紙が弱くなってちぎれやすくなりますから、スジをつけずにピンセットではさんで曲げるという方法もあります。つまり、ペンチなどで針金を曲げるのと同じやり方です。ただ、この場合も折り目がくっきり出るように、折れ線の位置にピンセットのふちを当てて紙をはさみ、紙の裏から爪でこすって折り目をはっきり出します。

 ピンセットはこの他にも細かい部品を扱ったり、指の入らない奥まった部分で作業したり、接着箇所が定着するまではさんで保持するなど、ペーパークラフトを作る上で欠かせない道具ですから、使いやすいものを選びましょう。

 ペーパークラフトというと繊細なイメージがありますから、それに使うピンセットも細長いものが適しているように考えがちですが、実際には短いものの方が使いやすいです。というのは、紙のように薄いものを保持するにはピンセットを強く押さえなくてはならず、大きなピンセットでは指が疲れるからです。また、上級者になってきたら用途によってまっすぐなものや首の曲がったものなどを使い分けるとよいでしょう。

第6回  曲げる

 曲げるという言葉の意味には、前回の「折る」という行為も含まれますが、ここでは折り目をつけずに曲面を作ることを「曲げる」と定義します。

 最もよく使われる曲げ方は、「丸める」、つまり円筒を作るという作業です。この場合は鉛筆などの細い棒を芯にしたり、机のへりでしごいたりして紙に丸めぐせをつけます。丸めぐせをつけないと、紙がスムースに曲がってくれないし、反発力が強すぎて接着してもはがれて元に戻りやすくなります。

 ちなみに、紙には丸めやすい向きと、丸めにくい向きがあることも意識して、縦横の配置を意識してください。(付録も参照)

 やむをえず曲がりにくい向きで曲げなくてはならないときは、曲げる部分に水を筆でつけて、紙を一時的に柔軟にしておくと有効です。その他細い直径で筒を作るときや、曲がった形を恒久的に維持したいときなど、紙を濡らしてから乾燥するまで曲がった形のまま押さえておくという裏ワザがあります。ドライヤーを使えば時間が短縮されます。

 次に、球面のように全方向的な曲面を作る方法があります。エンボスとかカーリングとか呼ばれます。デコパージュなどで紙パーツの周囲に丸みをつける技法です。

 これには、2つの道具が必要です。一つはガラス棒、スタイラス(コミック材料でスクリーントーンをこする道具。トランサーともいう)スプーン、マドラーなど、先が固くて丸いもの。もう一つは下敷きとなるものでスチレンペーパー(スチレンボードの上紙をはがしたものでも可。)、スーパーの食品トレイの平面部分、フェルト、マウスパッド、書道の下敷き、スタンプ台、重ねたティッシュペーパーなど、身近なもので代用できます。
 
 カーリングは、慣れるまで別の紙で練習することが必要です。基本的には、紙で皿を作ると思ってください。当然、出来あがりは凹面になりますから、凸面にしたい場合は紙を裏返して行います。まず、切りぬいた紙を下敷きの上に載せ、曲げようとする部分を丸く硬い道具でぐりぐりと力を入れてしごきます。一箇所だけ力を入れると紙が破れたりしわになったりしますから、周囲から徐々に力を加えて紙をなだめるように変形させていきます。このあたりが技術を要するところであり、練習が必要なゆえんです。

 また、「型」を使う場合もあります。よく使われるのは円定規、つまり大小の円がくり貫かれたテンプレートです。まずテンプレートを逆さに(エッジの鋭い側を上にして)置き、その上に紙を乗せて穴にあたる部分を堅い道具でぐりぐりと円を描くようにしごきます。特にエッジの部分に力を入れると、平面の紙からくっきりとドームが盛り上がったような不思議な形状が出来あがります。

 このドームは、目玉やパターンとして使ったり、切りぬいて皿状の部品として使えます。もちろん他の定規を使ったり、厚紙でテンプレートを自作すれば、円以外の好きな形に盛り上げることができます。

 なお、この章における「曲げる」とは趣旨が違いますが、紙をくしゃくしゃに丸めてから開くと不規則な凹凸ができます。これで背景の岩山や水面を作ることができます。こうしてちりめん状にした紙には2つの特性があります。一つは塑性が増して、紙を粘土のように変形させることが出来、しかも元に戻りにくいこと。もう一つは紙が丈夫になって破れにくくなることです。じつは昔、この性質を利用して、くしゃくしゃにした紙袋を開いてつなぎ合わせ、怪獣の着ぐるみを作ったことがあります。もちろん、十分使用に耐えることができました。

第7回  接着剤

 一般のペーパークラフトのみならずワンシートクラフトでも、台紙に接着するときなどに、接着剤は必要不可欠です。ペーパークラフトの場合、よく使われるのは木工用ボンドです。具体的には、水溶性で白く、乾燥すると透明になるタイプです。有機溶剤の場合は、紙にしみこんで跡が残るので適していません。

 また、接着剤には「速乾性」と「遅乾性」の2種類があり、これを使いわけるのがコツです。広い面や、複雑な形ののりしろで、塗るのに時間がかかる場合は塗っている途中で乾燥してしまわないように水分の多い遅乾性が適しています。また、粘度が低いので広く伸ばすことも出来ます。和紙の場合には大和糊が適していますが、洋紙の場合、あまり水分の多い糊は、紙がしわになるのでお勧めできません。そこで、ペーパーセメントやスプレーのり、スチのり、スティックのりなどを使う方法もあります。

 速乾性の接着剤は組み立て作業を効率よくすることができます。速乾か遅乾かは、接着剤の成分表を見ればわかります。水の比率が半分以下、45%ぐらいであれば速乾性です。接着剤が強力であれば、紙の切りぬきも楽になります。たとえば円柱を作る場合、円筒部分の上下に円形のふたを接着しますが、普通はこのふたの周囲に歯車のように無数ののりしろをつけなければなりません。しかし接着剤が強力ならばこののりしろは必要でなく、円筒のヘリに接着剤を塗るだけで、円形に切っただけのふたを乗せればできあがるというわけです。

 また、速乾性の接着剤では、接着部を手またはピンセットで押さえなければならない時間が短時間ですみ、すぐに次の作業に移れますから、組み立てが早く進行します。しかし速乾性でなくても裏ワザはあります。接着部をはさんだピンセットの中ほどをクリップではさみ、開かないように固定しておけば手が離せるので、別の作業に移れるというわけです。

 接着剤には別の用途もあります。デコパージュに使われるシリコン系接着剤は粘度が非常に高く、紙を浮かせて接着することができます。仮止め用(はがせるタイプ)の接着剤は、展開図を工作用紙に貼りつけてそのままカッティングした後はがすのに適しています。

 また、接着の手段としては両面テープがあります。手を汚さず乾燥の必要がないなど短時間で簡単に工作を作るのには便利ですが、長期間たつと接着力が失われてしまうので、保存を前提とした作品には適していません。

 接着とはいえませんが、紙と紙を接続する方法としては、ホッチキス、マジックテープ、縫合、編み込み、クリップ、縛りひも、輪ゴム、ピン、磁石などがあります。さらに、道具を使わずに紙を接続する手段として「さし込み」「かみ合わせ」といった特殊な技法があります。私の開発したワンシートクラフトの心臓部ともいえるそれらの仕組みについては、章を改めてご説明しましょう。

 それでは、次の講座までごきげんよう。この講座についてのご質問や、今後取り上げてもらいたいテーマについては、下記のメールにてお寄せください。

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