ペーパークラフト講座
実践篇
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このコーナーでは、これからペーパークラフトにチャレンジしようという方のために、基本的な知識やテクニックをご紹介します。中には門外不出の裏ワザに相当する部分もありますが、ペーパークラフトの普及のためには情報の提供を惜しみません。ハサミの使い方に始まり、今後どんどん記事が追加されていくので、全部集めればペーパークラフトの入門書が完成することになります。 |
道具紹介 |
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これまで、基本篇ではペーパークラフトという言葉を、すでに万人が知っている日常用語として使ってきましたが、それは作者側による思いあがりであると感じてきました。また、今後の章でさらに細部の説明に入るにあたって、ペーパークラフトの意味や分類をしっかりしておく必要が出てきたので、ここで1項を使って「ペーパークラフトとは何か」という話をします。 狭い意味でのペーパークラフトは、その語感のとおり西洋からもたらされたものです。ペーパースカルプチャー(紙の彫刻)やペーパーアーキテクチャー(紙の建築)などと呼ばれ、特に半立体(レリーフ)作品はアメリカで盛んで、多くの作家がイラストレーターとして高い評価を受けています。 ペーパークラフトは洋紙とともに明治以降日本にもたらされ、主に少年雑誌の組み立て付録として普及しましたが、そのためか日本ではどうしてもペーパークラフトというと子供向きの遊びのイメージで、1段低く、安っぽく見られてしまうのが現状です。 一方、西洋型のペーパークラフトとは別に、日本には古来から折り紙をはじめとする和紙を使った紙細工の文化があります。たとえば和紙人形や七夕・正月飾り、のし、和装小物や民芸品などに現在もみられますし、江戸時代には、「切り型」といって堅い和紙を使った組み立てキットまで作られていました。これは現在販売されているペーパークラフトキットとそっくりです。 ここまでくると洋紙・和紙という素材の区別は無意味になります。したがって現在ではペーパークラフトといえば日本発の和紙細工も含めて考えるのが一般的です。私自身も和紙から洋紙まで紙なら何でも使用しています。何といっても名前が和田洋一ですから。 日本は世界で1番紙が豊富な国であり、手先の器用さもあって、今や世界随一のペーパークラフト王国となっています。全世界に進出した折り紙をはじめ、ペーパーモデルや飛び出す絵本の分野でも、すぐれた造形が日本から世界に向けて発進され続けています。 ペーパークラフトというのは、広い意味でとらえれば、紙を使った造形物すべてをさすわけですが、中にはペーパークラフトに似ていて、そうでないものもあります。 たとえば、凧や提灯などは、その形を形成している芯材が紙でないため、ペーパークラフトとは言えません。また、紙粘土細工は、確かに成分は紙ですが、技法的にも質感的にも、他の素材粘土と分けることはできません。紙ならではの特性というものが見当たらないからです。 ペーパークラフトというのは、「切る」「折る・曲げる」「貼る」など、紙特有の技法をメインにして作られた作品といえるかもしれません。折り紙の場合は切ったリ貼ったりしないように、あくまでも全部の要素が使われる必要はありませんが、重要な目安になると思われます。 それでは、具体的にペーパークラフトの種類を見てみましょう。なお、分類名は、私の独断によるもので、一般的でない場合もあります。 |
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これらのうち、切り絵、貼り絵、ちぎり絵、デコパージュ、折り紙、張り子などについては、それぞれ独立したアートの分野として定着しており、ペーパークラフトというよりも、それぞれの名前で認知されていますし、私などが説明するまでもなく、専門家がたくさんいますので、この講座で深入りするのは僭越と感じます。それぞれのカテゴリーで検索して調べていただく方がていねいで正確な情報が得られるでしょう。 というわけで、この講座では基本篇でとりあげた「切る」「折る・曲げる」「貼る」などの技法を駆使し、「ともかく紙で立体を作りたい」という、このHPを訪れてくれた多くの方が望んでいる方向で話を進めていきますが、先に除外したジャンルも全く無視するわけではありません。「山折り」や「谷折り」といった基本技法は折り紙から来ていますし、表面の演出やテクスチャー表現には紙を貼り重ねる技法も必要になってきます。 しかし、まずは基本から、ということで、1枚の紙で何か作ってみよう、というところからスタートしていきたいと思います。 |
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第2回 基本は2つ折り |
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そもそも私が本格的にペーパークラフトを始めたきっかけは、元来工作が好きだったこともありますが、小学校の頃テレビで立体切り絵の実演を見て真似をしてみたのが始まりです。それは、2つ折りにした紙からカブトムシやクワガタなどの半身の形を切りぬき、頭・胸・胴の境目を折り縮めて全体を屋根型に整えるというシンプルなもので、それゆえ子供でもすぐに真似ができたのです。 昆虫や動物の知識があったことから、カブト・クワガタ以外でも、あらゆる昆虫や動物を紙で作ることに挑戦しました。そのうちに、どうしても2つ折りの紙だけではリアルに作れないものも出てきて、そのたびに自分なりに工夫していろいろなテクニックを追加していきました。 こうした、私のペーパークラフト歴をたどってみることが、ペーパークラフトの世界にスムーズに入って行ける道だと思います。そこで、すべての原点となった「2つ折りの基本形」から始めていきましょう。 1枚のハガキは立てることができませんが、2つに折った往復ハガキは本のようにに開いた形で立てることができます。紙は一箇所折るだけで立体になるのです。あとは、りんかくを面白い形に切り抜けば、最もシンプルなペーパークラフトの完成です。 たとえば紙相撲(トントン相撲)の力士は、2つに折った紙に力士の絵を左右対称に描いて切り抜いたものでした。この原理を生かしてクワガタムシを作ってみましょう。 |
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適当な大きさの紙を縦に2つ折りにして、上のような図形を切りぬいてください。図のABをつないだ線が、2つ折りした折り目で、切りぬくのは太い実線です。切りぬき方は本講座基本篇の第1〜3回も参考にしてください。 全部切りぬきが終わったら、紙を開いて、上図のC、Fのラインを山折り、D、Eのラインを谷折りにして、体をちぢめます。折れ線の位置は、切りぬく前に薄く描いておくといいでしょう。 こうして、体が3枚重ねになったわけですが、接着していないのでこのままでは折った部分が自然に開いてきてしまいます。そこで、全体を再び上のABのラインで軽く山折りにして、折り目が戻らないようにします。 |
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さらに、上の完成図を見てください。6本の脚がいずれも体の下から出ているように見えますね。これも昆虫の特徴です。再び展開図を見てもらえばわかりますが、折り重ねる際に下に隠れる部分から脚を出すようにしています。 どういう風に展開図を描けばこうなるのか、一見むずかしそうですが、要は、頭と前脚の位置関係、胸と後2対の脚との位置関係は動きませんから、図鑑をよく見てしかるべき場所に脚を付ければいいわけです。 このように、たった一つのものを作るだけで、その中に設計上のいろんな要素が入っていることや、それらがいずれも簡単なりくつの応用であることがわかったと思います。それから、この場合は昆虫ですが、作ろうとする対称についての知識が意外と必要であることも。 巻貝などを除いてほとんどの動物は左右対称の形になっています。したがってたいていの動物は2つ折りの基本で作ることが出来ます。ただ、2つ折りにすると、どうしても横から見て背中がまっすぐな動物しか作れないように思えます。 実際には首が上に曲がっていたり、尾が下に下がっていたりで、背中が一直線とはいえない動物が大半です。これらの動物はどのようにして、2つ折りで作ればよいのでしょう。 次に2つの例をあげて、この問題点の解決法を紹介していきます。 |
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ただ、上の例でキリンの首がじゃまになって反対側の胴体の前部が途中で切られているように、どうしても2つ折りの部分を追加していくと、逆に犠牲にしなければならない部分も出来てしまいます。 要は、その犠牲を最小限に押さえるレイアウトやポーズ設定を考えるとか、切り口が自然な形になったり、逆に効果的に見えるような演出を考えるなど、経験と工夫を重ねることによって、この基本的なペーパークラフトもどんどん進化していきます。 |
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ポップアップ化の利点は、オリジナルのグリーティングカードなどとして利用できること、またコンパクトになるので収納や運搬が簡単になること、2本脚のティラノサウルスのように接地部分が少なくても立たせることができること、背景を追加して演出ができることなどです。こうして、ますますペーパークラフトの世界が広がっていきます。 それでは、次の講座までごきげんよう。この講座についてのご質問や、今後取り上げてもらいたいテーマについては、下記のメールにてお寄せください。 それでは、次の講座までごきげんよう。この講座についてのご質問や、今後取り上げてもらいたいテーマについては、下記のメールにてお寄せください。 |
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