ペーパークラフト講座

   実践篇

このコーナーでは、これからペーパークラフトにチャレンジしようという方のために、基本的な知識やテクニックをご紹介します。中には門外不出の裏ワザに相当する部分もありますが、ペーパークラフトの普及のためには情報の提供を惜しみません。ハサミの使い方に始まり、今後どんどん記事が追加されていくので、全部集めればペーパークラフトの入門書が完成することになります。
基本篇
第1-2回定義・2つ折り


道具紹介



第3回 3つ折りの作品

 前回でも触れたとおり、2つ折りの基本を使えば、世の中のほとんどのもの(特に動物)は表現することができます。しかし、製作を重ねていくうちに、2つ折りにあき足らなくなり、もっと違う方法で作ってみたくなるでしょう。そこで、今回は3つ折りで作るという、別バージョンのペーパークラフトの形をご紹介します。

 3つ折りとは、紙をコの字形に折った形が基本になるということです。2つに折りたたむことはできませんから、2つ折り作品のようにポップアップに使用する、という芸当はできませんが、そのかわりにもっと大きなメリット・・・さらに高度なペーパークラフトのテクニックにつながるヒントがいくつも隠されています。

 まずは、一つ実例を作ってみましょう。
 3つ折りとはいえ、動物を作る場合は左右対称の構造に変りありません。はじめは2つ折りのときのように、2つに折った紙で作ってみましょう。上の図のABが対称軸です。CDおよびCの上の点線は折れ線で、紙の反対側にもあります。下書きをするか、表から針で穴をあけて印をつけるなどして、裏表とも折り目をつけてください。

 組み立てるときは、紙を開いて、最初に折った2つ折りの線を消してから、新たに作った折れ線だけで折り曲げます。

 左が完成図です。ゾウが出来ました。耳や鼻、尾などはそれらしく見えるように曲げます。目は左右対称に描き入れてください。

 このように、太ったイメージのあるものや、正面顔に特徴のあるものなどは、2つ折りよりも3つ折りで作った方が向いています。
 3つ折り作品が完成した時に、中央に残る「2つ折り線」が目障りで困るという方は、展開図の反転コピーをとって対称軸に重ね、紙を折らずに開いたままでカットします。このとき、不要な2つ折り線は消しておいてください。

 次は、好きな動物を3つ折りで作る方法を説明いたします。   
 上はネコの展開図です。この描き方を順を追って紹介します。

 考え方は2つ折りと同じく左右対称になるので、半分の形を描いてから反転コピーをつなげて作ります。対称軸ABを設定してから、その下に作図します。

 まず、左端に作ろうとする動物の顔の半分を描きます。2つ折りのときと違うのは、正面向きの顔で描くということです。次に、その首のつけねから後方に長い折れ線(上の例だとCDの線)を引き、その折れ線を背中のラインに見たてて下に胴体と脚のりんかくを描きます。尾は哺乳類の場合は細いですから、3つ折り線より内側から描き始めます。

 これで完成ですが、各部の形やバランスは、組み立てて様子を見てから必要に応じて調整してください。人によっては、体を先に描いてから、その前後に頭と尾を付け足す方が描きやすいかもしれません。
 これを組み立てると、左のようになります。

 ここで注意してもらいたいのは、前に作ったゾウのように、首が下に向いている動物は、胴に付いている側が頭の上部になり、このネコのように首を上に曲げる場合は、胴から遠い方が頭のてっぺんになるということです。

 したがって展開図を描く場合は、首の曲げ方を考えて、頭の向きに注意してください。

 また、このネコのように首を上に曲げる場合は、紙の裏側が顔面として表に出てきますから、表裏で色の違う紙や広告の裏などで作る場合は注意してください。


 次に、上の展開図を見てください。線分ABが対称軸であるのはこれまで通りですが、ここには3つ折り線が3本あります。(線分CD、DE、FG)

 このように3つ折り線は(2つ折り線ももちろんですが)一つの作品に何本設けてもかまいません。また、線分DEとFGのように幅がまちまちでもよく、線分CDのように、斜めになっていてもさしつかえありません。要は、展開図を開いたときに対称形に配置されていればよいのです。
 この展開図を組み立てると左のような馬ができあがります。図のアミで表現した部分は紙の裏が見えている箇所です。

 上の展開図だけを見て、この馬を即座にイメージできた方は、あまり多くなかったのではないでしょうか。

 ペーパークラフトも複雑になるにしたがって展開図と完成品とのイメージのギャップが大きくなってきます。それだけ設計するのが難しくなっていくということです。

 しかしこの場合でしたら、顔、首、胴体などを別々に試作してみて、つなげてから開いて展開図を確かめればよいわけです。
 3つ折り線は、曲線にすることもできます。当然、左右対称にカーブしていなければなりませんが。上の展開図で作ってみましょう。対称軸ABの上にも同じ形が続いていることになります。
 曲線の折れ線は、きっちりときつ目に折ることが重要です。そうしないと、紙がだらしなく開いてしまいます。

 左が完成図です。耳と角をこのように折り返すと、牛ができました。しかも、アフリカのバッファローか洞窟に描かれた古代の牛のような荒々しい野生の牛に見えるでしょう。

 ここに、曲線折りの効果が現われています。盛り上がった肩と引き締まった胴という、野牛ならではのフォルムの特徴を一発で表現できるのは、折れ線がカーブしているからこその芸当なのです。

 
 前の作品「馬」が、まるで木馬か民芸品の三春駒みたいだったのに比べると、その生命感は歴然としているでしょう。生物をより生物らしく紙で表現するときに、この曲線折りは非常に有効です。

 ここで、話がそれるというか、前項に戻りますが、曲線折りが出たついでに、2つ折り線を曲線で折るケースについて、ご紹介しましょう。下の展開図がその例です。
 言うまでもなく、これはヘビの展開図です。2つ折り線を曲線にした場合、展開図は左右対称にはなりませんから、このように紙を2つ折りせず全体を描かなくてはなりません。

 作図方法としては、太目のヘビのりんかくを描いてから、その中心に山折り線を引きます。首のところから折り線が分かれて、頭は3つ折りになっていますが、このように折れ線は2つ折りから3つ折りに分岐させることもできます。

 完成したヘビが左図です。

 展開図ではのっぺりしていたのに、立体化すると意外に迫力が出てきます。頭も毒ヘビのように三角になっています。

 体のカーブは、展開図ではゆるくても、2つ折り線を屋根型に折ることによって前後が縮まり、きついカーブになります。

 このように、曲線による2つ折りは、左右にカーブした長い部分に適しています。

 たとえば、私の場合、首長竜やカミナリ竜の首や尾などを単純化して表現するときなどに使っています。

                   この項つづく


  それでは、次の講座までごきげんよう。この講座についてのご質問や、今後取り上げてもらいたいテーマについては、下記のメールにてお寄せください。 それでは、次の講座までごきげんよう。この講座についてのご質問や、今後取り上げてもらいたいテーマについては、下記のメールにてお寄せください。
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