ワイルドライフアート3

Wild life art

私の所属する動物アートの団体「日本ワイルドライフアート協会」の展示会が年3回あり、それぞれに新作を出し続けていることもあり、現在制作活動の大きな比率を占めています。今後もこのペースで作品が増えていくことと思われます。ただ私の場合モチーフのチョイスがややマニアックと言われますが、これは自分が実物を見てみたいと思うものを作るというのが動機になっているからです。

 

 21.日和見

Opportunist

2009年発表 縦40cm半立体 ピーチケント、ラシャ、和紙等使用
左右の鳥はどちらも同じアフリカオオコノハズクです。テレビで一時話題になりましたが、弱い相手を前にした時は体を丸々と膨らませて虚栄を張り、相手が強そうだと体を細めて木の枝のふりをする、その変わり身の極端さがユーモラスでした。ここでは細くなった姿を立体で作り、丸々とした威嚇ポーズは平面の貼り絵で表現するといったように、技法も対照的にしてこの2態を比較してみました。

 

22.ハクビシン

Masked Palm Sivet

2010年発表 全長50cm ピーチケント使用
ハクビシンは外来の生物という意見もありますが、その一方で、江戸時代以前からいた、という話もあります。かつて「むじな」と呼ばれていた動物が、アナグマかタヌキ、またはハクビシンであっただろう、と言うのです。いずれにしても、現在日本の人里で遭遇する機会は多く、ネットで画像検索すると、車に轢かれた死体が多くヒットするのは心が痛みます。

23.美ら海

Beautiful Sea

2010年発表 全長70cm ピーチケント、タント紙等使用
図鑑の挿絵も手がけている知人の描いたジンベイザメの横向きの図を拝借し、それを下描きとして3Dモデルを作り、展開ソフトで設計しました。表題の美ら海水族館には行ったことがありませんが、大阪の海遊館でジンベイザメとマンタを見る機会があり、ジンベイザメとマンタは何となくコンビのような認識が出来上がってしまっていて、このように組み合わせて見ました。本体の内部とスタンドのアクリル棒の先端には磁石が仕込んであって、着脱可能になっています。

24.怖い物知らず

Fearless

2011年発表 ラーテルの全長50cm ピーチケント、上質紙使用
アフリカの乾燥地帯に住むアフリカラーテルというイタチ科の動物は、ライオンにも臆せず立ち向かっていき、世界一怖れを知らない動物と言われますが、猛毒のパフアダーという蛇にも自分から近づき、噛まれて毒が回り失神してもしばらくすると何事もなかったように動き出すという物凄い適応力を持っています。蛇のうろこは全部自然につながるように調整して描き込んであります。

25.危険な芸術

Dangerous art

2011年発表 高さ22cm タント紙、インクジェット紙、トレーシングペーパー等使用
よく豪邸の床の間にスズメバチの巣を置物として飾っていることがあり、その実物を観察してみると質感がパルプっぽく見えて来て、いかにも紙で作れそうだったので作ってみました。2-3色の褐色の紙を交互に重ねて山の地図模型みたいなパーツをたくさん作り、それを鱗のように重ねながら球殻状にまとめていきました。最後に迫力を増すために紙で作った精密な蜂を添えました。蜂の半透明の羽は、トレーシングペーパーに無地の褐色を薄くプリントして使いました。

26.オオアリクイ

Giant Arterter

2012年発表 全長70cm ピーチケント使用
グループ展の人数に一人欠員が出て、スペースを埋めるために急遽制作した大型の作品です。と言っても、いつかは手がけてみたかった題材ですが。こういう毛足の長い動物はペーパークラフトにとって最も作りにくいモチーフの一つです。毛をまとめてのっぺりした面にしなければならないので、どうしても質感にギャップができてしまいます。パーツをまたいで長い毛を描き込んだり尾の先をランダムに切り込んだりしました。なお、舌は本物のように伸び縮みさせることができます。
 
 

27.ミーアキャット

Meerkat

2012年発表 身長25cm 上質紙使用
アフリカ南部の乾燥地帯で、地中の穴に集団で住むマングースの仲間で、並んで太陽に向かい直立して日光浴する様子がよく紹介されます。複数の個体を作って、そのユーモラスな儀式を再現しました。展開図の基本形は同じですが、拡大率や首の長さ、微妙なポーズなどを変えて個体間の個性に変化をつけました。他の作品に比べて高い解像度で印刷しているので、かなりリアルです。
 

28.リーフィーシードラゴン

Leafy sea dragon

2012年発表 枠サイズF4 タント紙、トレーシングペーパー等使用
辰年にちなんで作った作品。オーストラリアのグレートバリアリーフなどに見られる変わった形のタツノオトシゴで、海草に擬態し、ゆらゆらと水中を漂っています。これを水中に浮いた状態で再現したいと考えましたが、「緊迫」のワシのように鏡を使ったのでは手前の物も写ってしまい、水の透明感が出せません。そこで、透明アクリル板をベースとし、その両側から別々に作った右半身と左半身を合わせて接着するという独自の方法をとりました。ただ、薄っぺらい生物なので、ペーパークラフトとしての醍醐味には欠けます。s
 
   

29.ディアトリマ

Diatryma

2012年発表 パネルサイズB4 ピーチケント、ラシャ使用
新生代第三紀始新世に生息していた古代の飛べない鳥で、身長は2mもありました。巨大な爬虫類が滅び、哺乳類が大型化するまでの一時期、この肉食の鳥は食物連鎖の頂点に君臨していました。私は我孫子の「鳥の博物館」でこの鳥の骨格を見ましたが、かぎ爪のある三本指の足など、まさに肉食恐竜そっくりでした。あまりにも迫力があるので、ほぼ実物大の頭部で表現し、額から飛び出した大首絵、という演出で作りました。強力磁石によって本体とボードは着脱可能です。
 
 

30.カブトガニ

Horceshoe crab

2013年発表 全長50cm ピーチケント使用
生きた化石と呼ばれる節足動物で、クモに近い動物だそうです。形は単純なようですが、なめらかなドーム型の甲羅の造形には苦労しました。パーツを多く分割すればなめらかになるかと言うとそれは逆で、多く分割すればその分頂点や張り合わせの紙の段差の箇所が増え、カクカクした形になってしまうのです。したがって表面のテクスチャや錯覚も利用し、なるべく少ない分割でなめらかな丸みが出るように工夫しました。伏せて飾るとせっかく作った裏側の脚が見えないので、下に鏡を置きました。
 
 

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